ホテル御曹司が甘くてイジワルです

「幼いころからグループの後継者として育てられてきて、名前まで社名をそのままつけられて、自分の存在価値は会社を継ぐことだけなんだと思ってきた。だから余計に親父の作り上げたものを受け継ぐだけじゃなく、新規事業を立ち上げて自分の可能性を試してみたかったのかもしれない」

淡々とした口調に、逆に彼の本音がにじんでいる気がした。
ひどく無防備な彼の本質に触れた気がして、なんだか胸がさわいでしまう。

自分の可能性と言った彼の言葉に重みを感じる。
敷かれたレールではなく、自分の選択で自分の道を歩きたいという清瀬さんの気持ち。

本当の彼を知るたびに、最初に受けた印象とはどんどん変わっていく。
彼の新たな一面を見るたびに、どうしようもなく惹かれはじめている自分に気付いて、ひどく動揺した。


プレアデスグループの御曹司である清瀬さんに惹かれたところで、相手にされるわけもないし、もともと違う世界に住む人だ。
オーベルジュがオープンしてしまえば、きっと本社に戻るんだろう。
そうすれば、今みたいに頻繁に会うことなんてなくなる。


そんなことを考えると、胸のあたりが苦しくなった。


「私はいい名前だと思いますよ。昴、好きです」

気を取り直して言うと、清瀬さんがくすりと短く笑った。
その吐息が優しくて、さらに胸を締め付けられた。

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