ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「臆病じゃなくて、向いてないだけです」
「確かに人には向き不向きはあるけど、だからって苦手なことを避け続けて一生ひとりっていうのもさみしいと思うよ」
片方だけ眉を上げた館長が、横目で私を見ながら笑う。
「そういう館長だって、独身じゃないですか」
優しくてユーモアがあって、三十歳も下の私から見たって魅力的な館長は、人生で一度も結婚の経験がないらしい。
望みさえすれば、彼と一緒に人生を歩みたいという女性はたくさんいそうなのに。
「僕はいいんだよ。星空が恋人だから」
私の反撃に館長はいつものように穏やかに笑う。
「じゃあ、私も星空が恋人でいいです」
その言葉に便乗すると、館長は出来の悪いわが子をみるような表情で優しくため息をついた。
「もったいないねぇ。せっかく夏目さんは可愛くて素敵な女性なのに」