ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「もう、そんなお世辞やめてください」

お世辞だと分かっていても、面と向かって褒められると恥ずかしくて居心地が悪くなってしまう。

「お世辞じゃなくて本心だよ。夏目さんは仕事ばかりしているけど、自分から出会いを探そうとすれば、すぐに素敵な恋人ができそうなのに」
「その言葉、そっくりそのまま館長にお返しします。さ、私はドーム内のチェックをするので館長は事務所でお仕事していていですよ」

照れくささを誤魔化すように館長の背中を押し、雑談ですっかり緩んだ気分を切り変える。


コロコロを取り出しドーム内のカーペットを軽く掃除しながら、座席に忘れ物がないかのチェックをはじめると、館長もうなずいて事務所へと戻っていった。

ドーム内にひとりになったことを確認して、小さく息を吐く。


私だって、恋をしたことがないわけじゃない。

大学生の時に一度、同級生の男の子と付き合った。
私と同じく星が好きで、物静かで優しくて、なによりも私を大切にしてくれる男の子だった。
一緒にいることが心地よかったし、隣にいると安心できた。


だけど……。


 
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