ホテル御曹司が甘くてイジワルです
温かくて柔らかいのに、わずかな痛みを伴う感情。幸せなのに、泣きたくなる感覚。
あぁ……。
自分の中に満ちるそのなにかを自覚して、思わず手で顔を覆いたくなった。
どうしよう。私、清瀬さんのことが好きだ。
もう、どうしていいのかわからないくらい、彼への好意で胸がいっぱいだ。
このままじゃ瞳が潤んでしまいそうで、さりげなく視線をそらし窓の外の夜景をみやる。
「とても素敵な景色だけど、ここからじゃ月は見えませんね」
今日は満月のはずだけど、方角のせいでその姿は見えない。少し残念に思いながらつぶやくと、清瀬さんが何かを思いついたように笑った。
「じゃあ、食事が終わったらもっと素敵な場所に案内しよう」
「もっと素敵な場所ですか……?」
首をかしげた私に、清瀬さんがうなずいた。