ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「お客さん、なかなかこないねぇ」

長谷館長が事務所のカウンターに頬杖を付きながらそうぼやいた。

「平日ですからね」

苦笑いしながら事務所の窓から外の通りを見ると、美しい石畳の坂道とその先にわずかに海が見下ろせる。

明治時代に港町として発展したこのあたりは、今でも歴史ある古い建物やガス灯が残っておりノスタルジックな街並みがとても素敵だ。

しかし駅から少し離れているせいか有名な観光地というわけではなく、知る人ぞ知る穴場的な場所で、残念ながら活気があるとはいえない。

そんな場所にひっそりと建つプラネタリウム。
観光客も来なければ、地元の人も何度も足を運んでくれる常連さんはごくわずかだ。

館長の優しい語り口の星座解説はとても人気があって、地元だけでなく全国からお客様が来てくれていたそうだけど、最新の投影機を備えた大型の施設や、プラネタリウム以外の娯楽施設がどんどん増え、わざわざ『坂の上天球館』に遠くから足を運んでくれる人は減る一方だ。


 
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