ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「そ、それにしても、可愛い部屋ですね!」
ドキドキうるさい心臓を落ち着けるように深呼吸しながら、ぎこちない仕草で部屋を見回す私とは対照的に、清瀬さんは慣れた様子で着ていたジャケットを脱ぎハンガーにかけていた。
寺沢さんと話すために何度もここに通っていたみたいだし、食事だけじゃなく泊ったこともあるのかな。あの綺麗な秘書さんと一緒だったり……。なんて想像して胸がちくりと痛む。
思わずうつむくと、「悪かった」と謝られた。
「わ、悪かったって……?」
もしかして私の考えてることをお見通しだった?
ぎょっとして飛び上がった私に、清瀬さんはなんでそんなに驚いているんだと不思議そうに首をかしげながら言う。
「天気が崩れるって予報は知っていたけど、まさか道路が通行止めになるとは思わなかった」
「あ、そんなことですか……」
ほっとして胸をなでおろしながら首を横に振る。
「清瀬さんが謝ることじゃないですよ。お天気は仕方ないです。無理して車で帰ろうとして途中で事故にあったり土砂崩れに巻き込まれたりしたら大変だし」
「でも、明日の仕事は大丈夫か?」
そう言われ、はっとする。
今日は火曜で休館日だったけど、明日は通常通り開館だ。
「すみません、館長に連絡していいですか?」
慌てて言うと、清瀬さんもバッグの中からタブレットを取り出しながらうなずく。