ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「私、生まれつき少し耳が聞こえづらくて」
明るい口調で言われ、目を瞬かせる。
「聞き取ろうって集中すれば聞こえるし、口元を見れば何を言っているかわかるから、日常生活で困ることはあまりないんだけど」
「そうなんですか」
水音の中で後ろから声をかけたから気づかなかったんだ。納得しながらうなずくと、由美子さんは私を見ながら微笑んだ。
「真央さんでしたっけ。なにか人前でしゃべるお仕事をされてます? アナウンサーさんとか、学校の先生とか」
「あ、プラネタリウムの解説員をしています」
私の答えを聞いて、由美子さんが「やっぱり」と嬉しそうに笑う。
「発音がきれいで、とても聞き取りやすい話し方だなと思っていたの」
「ありがとうございます」
褒められると少し照れくさくて、はにかみながら頭をさげると、由美子さんはダイニングの椅子を引き、「よかったら、少し話しましょう」と私に椅子をすすめてくれた。
うなずいて腰かけ、雨が降り続ける夜の林をふたりで眺める。