ホテル御曹司が甘くてイジワルです



畳の上に寝っ転がると、窓の外からジーワ、ジーワとセミの鳴く声が響いてきた。

「のどかだなぁ……」

外がまぶしいせいで、室内はやけに薄暗く見える。

私はTシャツにショートパンツという軽装で畳の床に転がりながら、ぼんやりと窓のそとを眺め続けていた。

「久しぶりに帰ってきたと思ったら、一日中床に転がってばっかりね。うちの娘は人間じゃなくてナマケモノだったかしら」

目の前を横切りながらそんな嫌味を言うのは母だ。

「いつもは毎日真面目に働いてるからいいの。久しぶりの長期休暇なんだから、羽を伸ばさせてよ」
「羽を伸ばすどころか、骨まで溶けそうなだらけぶりだけどね」

あきれたようなため息をつかれ、私は転がったまま頬をふくらませる。



夏休みが終わり、施設の改装のためにしばらく休館することになった『坂の上天球館』。

ちょうどいい機会だからと館長にお願いしてしばらくお休みをもらい、忙しさを理由に数年顔もだせていなかった実家に一昨日帰ってきた。

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