ホテル御曹司が甘くてイジワルです
……なんだ、ちゃんと恋人がいるんだ。
自動ドアの向こうへ消えていったふたりを見て、反射的にそんなことを思ってしまってから、我に返って思い切り首を左右に振る。
いやいや、別に残念だなんて思ってないし、がっかりもしてない。
館長が私のことを好きなんじゃないか、なんてからかうから、ちょっと身構えてしまっただけで、期待なんて少しもしてないし。
誰かになにか言われたわけでもないのに、心の中で言い訳を並べる。
ふん、と鼻から息を吐き出してから、胸いっぱいに空気を吸いこんだ。
よし、掃除がんばろう。
そうつぶやきながら、ほうきを持つ手に力をこめた。