ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

……なんだ、ちゃんと恋人がいるんだ。


自動ドアの向こうへ消えていったふたりを見て、反射的にそんなことを思ってしまってから、我に返って思い切り首を左右に振る。

いやいや、別に残念だなんて思ってないし、がっかりもしてない。

館長が私のことを好きなんじゃないか、なんてからかうから、ちょっと身構えてしまっただけで、期待なんて少しもしてないし。


誰かになにか言われたわけでもないのに、心の中で言い訳を並べる。

ふん、と鼻から息を吐き出してから、胸いっぱいに空気を吸いこんだ。

よし、掃除がんばろう。

そうつぶやきながら、ほうきを持つ手に力をこめた。


 
< 22 / 278 >

この作品をシェア

pagetop