ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

掃除を終え事務所に戻ると、待合スペースに人影がなくて首をかしげた。

プラネタリウム室も上映中ではなさそうだし、さっきのお客様はどこにいるんだろう。

不思議に思いながら事務所をのぞくと、奥の応接スペースに座る館長と男の人の姿が見えた。

あんなところで、なにをしているんだろう。
普段、お客様を事務所の奥に通すことなんてないのに。

自動ドアの開く音で気づいたのか、長谷館長が顔を上げこちらを見た。

いつもののんびりした笑顔ではなく、わずかに強張った表情。常に穏やかな館長のそんな顔を見るのははじめてだ。

「夏目さん。悪いけど、いったん閉館の札をだしておいてくれるかい」

驚いている私に、館長がそう声をかける。

うなずいて言われた通り閉館中の札を出し、自動ドアのスイッチを切りながら、いったいなにがあったんだろうと鼓動が速くなっていく。

なんだか、嫌な予感がする。


 
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