ホテル御曹司が甘くてイジワルです
胸騒ぎを押し殺しながら、応接セットで向かい合う館長と男の人を見やる。
ふたりの間にあるテーブルには、なにかの資料が置いてあるだけで飲み物はなかった。
「今、お茶をお出ししますね」
館長に声をかけ給湯室に向かおうとすると、「いやいい」と短い返事が返ってきた。
館長の柔らかな声ではなく、よく通る低い声。
大きな声を出しているわけじゃないのに、体の奥に響くような艶のある声。
私が彼の方を見ると、彼は視線だけで館長の隣のソファに座るように促した。
どうしていいのかわからなくて館長の様子をうかがうと、「夏目さんも一緒に話を聞いて」と力なく微笑む。
戸惑いながら腰を下ろした私の前に、一枚の名刺が差し出された。
「プレアデスグループ、副社長の清瀬昴です」
シンプルで上品な名刺を受け取り、印刷された文字を目で追う。