ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「……え?」
ぱちぱちと目を瞬かせる私の前に、彼の後ろに控えていた女性が資料を差し出した。
その無駄のない動きに、彼女が彼の秘書だということに気付く。
「隣の商館をオーベルジュとして改築するそうだよ」
渡された資料を持ったまま、ぽかんとしている私に館長がそう説明してくれた。
「オーベルジュ……」
さっきから自体が把握できない私は、言われた言葉をただ繰り返す。
オーベルジュはたしか、フランス語で宿泊施設を備えたレストランのことだ。
たしかに、ただ食事をして帰るだけのレストランよりも、あの素敵な洋館で時間をきにせず料理やお酒を楽しみ、そのまま美しい景色を眺めながら宿泊できるなんて、ものすごく優雅で贅沢な時間を過ごせるだろう。
それはすばらしい。だけど、なんでうちの施設を買収なんて……。
「ここを、オーベルジュ専用の結婚式場にしたいと思っています」
私の疑問に答えるように、彼……、清瀬さんが冷静な声で言った。