ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「古い街並みと海が臨めるロケーションはもちろん、歴史を感じさせる石造りのこの建物も素晴らしい。駅から離れていて交通の便が悪いのも、大人の上質な隠れ家というオーベルジュのコンセプトにぴったりだ。プラネタリウムのドームは、外観はそのままで座席や投影機を撤去して式場として改装すれば、外国からやってくるゲストにも満足してもらえる唯一の式場に……」
「お断りします」

流れるように説明する清瀬さんの言葉を、遠慮なくさえぎって睨んだ。
目の前にある黒い瞳が、ゆっくりと瞬きをしてこちらを見る。

「式場が必要なら、新しく建物を建ててください。プラネタリウムの投影機を簡単に撤去するなんて言う人に、この大切な坂の上天球館を買収されるなんて絶対いやです」

何度もこのプラネタリウムに来てくれていたから、きっと彼も星が好きなんだと思っていたのに。
この人ははなから星に興味なんてなく、ただこの建物を値踏みするためだけに来ていたんだ。


 
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