ホテル御曹司が甘くてイジワルです
その資料をめくった副社長が、驚いたようにこちらを見た。
プラネタリウムの解説で『昴が一番好き』と顔を輝かせて言っていた彼女、夏目真央の経歴をまとめたものだ。
「彼女は学芸員の資格を持っていないようですから、『坂の上天球館』が潰れてしまえば、この先プラネタリウムの仕事をするのはほぼ無理でしょうね」
私がそう言うと、副社長は口を引き結んで押し黙ってしまった。
その不機嫌な表情を無視して、涼しい顔で続ける。
「あんなに楽しそうに星について語る彼女が、星座解説の仕事をできなくなるのは正直もったいないですよね。それならいっそあの土地にこだわらず、都内で星に関する仕事ができる職場を紹介すればいい。そうすれば、都内の本社で働く副社長とも遠距離になりませんし堂々と口説け――」
「遠山」
私の言葉を遮るように、低い声で名前を呼ばれた。
口を閉じて彼を見れば、じっとりとした視線で睨まれる。