ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 




彼らが帰ってから置いていった資料を見る。

プレアデスグループは、坂の上天球館が抱えている赤字を相殺してもまだ十分余裕がある金額でこの施設を買い取るという。
このあたりの地価を考えても、建物の資産価値を考えても、破格の条件だと思う。
だけど……。


そう思いながら資料の紙をめくる。
清瀬さんが調べたという、坂の上天球館の経営状態が記されたグラフに顔をしかめた。

施設の買収の話がでたことよりも、ここの経営がこんなに苦しかったことがショックだった。

確かに一般のお客さんは少ないけれど、地元の幼稚園や保育園のこどもたちが定期的に園の行事で見に来てくれていたし、小学校の社会科見学でも使われている。

なんとかやっていけてるんだと思ってた。
ここがつぶれるかもなんて、考えたこともなかった。
のんきに、この先もずっとこの場所で働けるんだと思い込んでいた自分が情けない。

奥歯をかみしめたとき、こつりと音がして私の愛用のマグカップが置かれた。


 
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