ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「幸い僕は結婚もしていないし子供もいない独り身で、借金を作ったって苦労するのは自分ひとりで迷惑をかける人もいない。ただ、君のことだけが気がかりだったんだけど……」
「私、ですか?」
こくりとカフェオレを飲み込んで首をかしげる。すると館長は柔らかく笑った。
「夏目さんは、プラネタリウムの仕事が好きだよね」
予想外に穏やかな声でそう聞かれ、私は戸惑いながらうなずく。
「僕も、夏目さんの星座解説が好きだよ。いつだって君から星の話を聞くと、童心にかえったみたいにわくわくする」
「それは、館長が育ててくださったおかげです」
大学生の時にたまたま訪れた『坂の上天球館』。
優しくわかりやすい言葉で、ユーモアを交えてプラネタリウムの星空の説明をする館長の解説に感激して、ここで働かせてくださいと頭を下げた。
大学で天文学を専攻してはいたけれど、学芸員の資格を持っているわけでも、人前で上手に話せるわけでもない、ただただ星が好きなだけだった私。