ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「もしかして、私が解説員を続けるために?」
聞き返した自分の声が、微かに震えていた。
その動揺まで包み込むように、館長はおだやかにうなずく。
私のために大切なプラネタリウムを売ろうと迷うなんて、どうかしてる。
思わず手で顔を覆うと、館長はぽんぽんと背中を叩いてくれた。
「僕は昔から、可愛い女の子に弱くてね」
冗談めかした明るい声で言う。
その優しさに胸が熱くなった。
「長谷館長。私、星座解説の仕事が好きです」
私が顔を上げると、うん、と穏やかにうなずいてくれる。
「でも、それ以上にこの『坂の上天球館』が大好きです」
強い口調でそう言いきる私を見て、館長は目を丸くする。
「だから。ここがなくなるなんて寂しいです」
我儘な私に館長は見開いた目を細め、あきれたように優しく笑った。
「夏目さんがそう言ってくれるなら、もう少し頑張りましょうか」
利用者も少なく、経営の傾いた、古く小さなプラネタリウム。
清瀬さんの言う通り、赤字を抱えてつぶれるのは時間の問題かもしれない。
だけど、このままなにもせず諦めるなんていやだ。
大好きなこの場所を守るために、自分にできることをしたい。そう思った。