ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

事務所の前には綺麗な庭がある。これも前オーナーの社長の趣味だという英国の農園風のナチュラルなお庭。

そこに置かれた鉄製のベンチに大輝くんとふたりで腰かけ、遠くに見える水平線をぼんやりと見下ろしながら、口の中で甘い飴をころがす。

しばらくそうしていると、隣にいる大輝くんが音をたてて飴をかじってから口を開いた。

「……サッカークラブのレギュラーに、友達が選ばれて俺は選ばれなかった」

ぽつりと言われ、私は前を向いたまま「そうなんだ」と相槌をうつ。

「そいつはもともと背が高くて足も速くて、俺のほうがいっぱい練習してるのにぜんぜんかなわなくて……」

堰をきったように言葉がこぼれだす。一気に思いを吐き出すと、大輝くんは顔をしかめた。

「あいつばっかり特別でずるいよ」

小さな声で言って、また黙ってしまう。

生まれ持った体格や才能。
ずっと一緒に練習している仲間だからこそ、かなわない自分をもどかしく思ってしまう気持ち。

 
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