ホテル御曹司が甘くてイジワルです
嫉妬しうらやんでしまう気持ちはわかる。
そう思う自分に罪悪感を抱いてしまう気持ちも。
「ねぇ大輝くん。人は誰でも月に行けると思う?」
私の問いかけに、大輝くんは瞬きをしてから顔をしかめた。
「行けないよ、あんなところ。行けるのは特別なやつだけでしょ」
「うん。人類で月の上を歩けたのはたったの十二人だけ。でもその特別な十二人も最初から特別だったわけじゃないよね」
「そうなの?」
「ものすごい努力をして、たくさんの難関を乗り越えたから特別になれたんだと思うよ」
私が青空の中にぽつんと浮かぶ白い月を見上げて言うと、大輝くんもつられるように視線を上げた。
この地上から三十八万キロのかなたから、地球を見下ろし続ける唯一の衛星。
あの場所に人類が降り立ったことがあるんだと思うだけで、本の中の冒険物語を読んでるみたいにわくわくした気分になる。
今から半世紀も前に、それまでだれひとり到達したことのなかった地球以外の天体に、降り立ち帰還するという偉業を達成した宇宙飛行士たちは、怖くなかったはずがない。