ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「あのっ! 放してください!」
動揺しているのが恥ずかしくて、もがくように清瀬さんの胸を押すと、彼はくすくすと笑いながら私を解放してくれた。
「いつも空のことばかり考えているから、地に足がついてないんじゃないのか?」
赤くなった頬を誤魔化すようにそんな憎まれ口に頬を膨らませる。
「ほ、放っておいてください。それより、いつからそこにいたんですか?」
彼の存在に気付かずにいた自分が恥ずかしくてそう問うと、「宇宙飛行士の話くらいからかな」と涼しい顔で答える。
そんなに前からここにいたなんて。
「盗み聞きなんて悪趣味ですね」
頬を膨らませた私を見て、清瀬さんが小さく肩を揺らして笑った。
「聞くつもりはなかったんだけど、思わず聞き入ってしまった。悪かったな」
そんなふうに、素直に謝罪されるとは思っていなくて驚く。
「いえ……」
戸惑いながら首を横にふると、清瀬さんはあおぐように空を見た。
視線の先にあるのは、青い空に浮かぶ半円状の白い月。