ホテル御曹司が甘くてイジワルです
私なんかを口説く物好きがいるわけない、と首を左右に激しく振ると、清瀬さんが私を抱きしめる腕に一瞬力をこめた。
「君は、見ていて不安になるくらい無自覚だな」
つぶやくような低い声に首を傾げると、ようやく腕を緩め解放される。
ドキドキうるさい心臓を少しでも落ち着かせようと深呼吸している私に、清瀬さんは静かな表情で口を開いた。
「長谷館長と話して、買収の話を断られたよ。こんないい条件を蹴るなんて、君たちはバカだな」
冷たい口調なのに、どこか楽しんでいるようにも聞こえた。
思い通りにならなかったというのに、まるでこの答えを予測していたみたいだ。
「大好きな『坂の上天球館』を、そう簡単につぶせません」
私がそう言うと、清瀬さんが小さく「そうか」とうなずいた。
「まぁ、俺もそう簡単に諦めない。これからもじっくり口説いていくから覚悟してろ」
低く笑いながらささやかれ、一気に頬が熱くなった。