ホテル御曹司が甘くてイジワルです
本当に助かったから、お礼をと言われればもちろんお礼をするけれど、いったい何をすれば。
「今夜、仕事は何時に終わる?」
戸惑う私に、清瀬さんがそう聞いてきた。
「えっと、八時すぎには」
「わかった。そのころ君を迎えに来る」
「え?」
目を瞬かせた私に、彼は「一緒に食事をしよう」と言って小さく笑った。
なんで一緒に食事なんて……。
私が不思議に思っていると、彼は言いたいことだけ言って、私の返事を待たずに帰って行ってしまった。
事務所に戻ると、長谷館長に「大丈夫だったかい?」と声をかけられた。
「さっき、体格のいい外国人に攫われそうになってただろう」
きっと窓から庭の様子が見えたんだろう。
情けないところを見られていたのが恥ずかしくて、誤魔化すように苦笑いする。
「攫われるなんて、大げさですよ」