ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

仕事を終え事務所から出ると、入り口に一台の白いドイツ車が停まっていた。
銀色の円の中に、三本の光芒が輝くエンブレム。言わずと知れた高級車だ。

その車体によりかかってこちらを見る背の高い男の人。
もうすっかり日が暮れ薄暗くなっても、シルエットだけで彼のスタイルの良さがわかる。

本当に迎えに来てくれたんだ。
もしかしたら、一緒に食事なんて冗談でただからかわれただけかも、なんて思っていたけど。

ためらいながら近づくと、清瀬さんは助手席の扉を開けてくれた。

「あ、ありがとうございます……」

こんなふうに男の人にエスコートされるなんてはじめてで、すごく緊張してしまう。

そういえば、男の人の車の助手席に座るのははじめてかもしれない。
二十八歳にもなって、人生経験が少なすぎだとなと恥ずかしくなる。

「食事の場所は俺が決めていいか?」

運転席からちらりと見られ、首を何度も縦に振る。
逆に私に任せられても、大企業の副社長を連れていけるようなお店なんて知らないから困ってしまう。

助手席で畏まる私を載せて、清瀬さんは車を発進させた。


 
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