ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「ま、待ってください!」

動揺する私を、清瀬さんが不思議そうに見る。

「どうした?」
「こんな高級ホテルのレストランに、こんな普段着で入れません」

シンプルな白いカットソーに黒いカーディガン。膝丈のスカート。
しゃれっけも色気もないシンプルで地味な格好の私が、こんなホテルのレストランで食事をするなんて絶対場違いだし落ち着かない。

そう訴えると、清瀬さんはそんなことかと笑った。

「大丈夫。周りの目は気にしないでいい」
「そんなこと言ったって、私が気になります」

レストランに来るお客様は、みんなそれぞれ着飾って贅沢な時間を楽しみにやってきているのに、こんな地味な私がいるせいで優雅な空気を壊してしまったら申し訳ない。

「……そうか」

私の答えに少し考えてから、エントランスにいるスタッフに声をかける。
そして戸惑う私を促すように腰を抱き歩き出す清瀬さん。そのエスコートの仕方がスムーズで、自然と足を進めてしまう。


 
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