ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「医療用のCTスキャンに太陽光発電やGPS、現代の生活に役立っている宇宙開発の技術は数えきれないほどあります」

私の言葉に、清瀬さんはそんなことは当然知っているという表情でうなずく。

「だけど私は正直、星への興味が人類にとって有益かなんて問いは、どうでもいいことだと思います」

そう続けると、清瀬さんは興味を持ったようにわずかに眉を上げた。

「星や宇宙のことを知らなくても生きていける。知ったところで明日が劇的に変わるわけでもない。それでも自分の住むこの世界のことをより深く理解したいと思うのは、人間の本能だと思います。芸術だって文化だってそうですけど、人が自然と心を躍らすものを役に立たないと排除してしまったら、人間は人間ではなくなってしまうと思います」

私の答えに、清瀬さんは満足そうに「なるほどな」とうなずいた。

一気にしゃべって少しのどの乾いた私は、グラスを引き寄せ赤ワインをひと口飲む。
こくんと喉をならしてから上目遣いに清瀬さんをうかがう。


 
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