ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「それに、このホテルだってそうですよね」
清瀬さんが「ん?」とわずかに首をかしげた。
「その日その日を生きていくためだけなら、こんな豪華な部屋も美味しい食事も高価なワインも必要ない。だけど、時間がたてば消えてしまうひとときの夢のためにたくさんのお金を払ってくれるお客様は、ただ純粋に楽しんでいるだけでこの贅沢が自分にとって有益かどうかなんて考えていないはずです」
私がそう言うと、清瀬さんの目付きが緩んだ。
口もとに指をやりながら「確かに」とうなずく。そして私にまた質問をする。
「君が星に興味を持ったきっかけはなんだったんだ?」
かすかに傾けた端正な顔に黒い前髪がかかる。その隙間からこちらを見つめられ、勝手に胸がさわいだ。
「私の地元は山間の田舎の小さな町なんですけど、街灯も建物も少ないので、夜になるとものすごい数の星が見えたんです。いやなことがあると、いつも二階の自分の部屋から夜空を見上げていました」