ホテル御曹司が甘くてイジワルです
平静を装いながら答えると、清瀬さんが「いやなこと?」とさらに聞いてくる。
「よくある話ですけど、父が少し酒癖の悪い人で。私に手を上げるわけではなかったんですが、酔っては母につらくあたるので、父がお酒を飲みだすと二階に閉じこもっていました。そんな時でも見上げるいつも星は美しくて、私の住む世界はこんなにきれいなものに囲まれてるんだと思うと、つらいことがあっても頑張れました」
こんな暗い幼少期の話を聞いても楽しくないだろうなと思いながら清瀬さんをうかがうと、彼はまっすぐに私を見て話を聞いてくれていた。
「それでプラネタリウムの解説員に?」
「そうです。私が星空にはげまされたので、私もうつむいて悩んでいるだれかの空を見上げるきっかけをつくってあげられればいいなって」
「そうか……」
つぶやいた彼がおもむろにこちらに手を伸ばした。
なんだろう、と思いながら瞬きをすると、温かい手がふわりと私の頭に触れた。
長い指が、私の髪を優しくかきまぜる。