ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

涼し気な黒い瞳や、通った鼻筋。
きゅっと引き結んだ綺麗な唇から男らしいあごのラインまですべて、完璧といっていいほどに整っていた。
人を圧倒する雰囲気を纏う、美形の男。

自然にセットされたやわらかそうな前髪が一筋まぶたにかかっているのが色っぽい。

そんな人にじっと見つめられて、私は動揺してしまう。
なにか、私に言いたいことでもあるのかな。
星座解説でなにか納得のいかないことでもあったんだろうか。

プラネタリウムの解説者はいつだって黒子だ。
お客様は星空を目当てに来ていて、背後のコンソールに立つ解説者なんて気にも留めない。

上映が終わった後にこうやって出口でひとりひとりに頭を下げても、星空の余韻にひたるお客様は私の存在を意識することはほとんどない。

素通りされることになれている私は、こうやってじっと見据えられるとなんだか居心地が悪くて、一歩後ろにさがろうとする。

すると、背中で押さえていた扉のドアノブにカーディガンが引っかかり、思い切りバランスを崩してしまった。


 
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