ホテル御曹司が甘くてイジワルです
なんでもないたのみに拍子抜けしつつ、ふたりでプラネタリウムのドーム内に入る。
彼の希望は私とふたりきりで、貸し切りでプラネタリウムを上映してくれというものだった。
平日の昼間で、悲しいことにほかにお客様もいないので、「いいですよ」と了解して上映の準備をする。
薄暗いドームの中、彼はコンソールのすぐ前の席に座った。
彼しかいないので、いつもの注意事項は省略して部屋の中を暗くしていく。
明かりを落とすと天井のドームが見えなくなり、頭上にはどこまでも続いているような暗闇が広がる。
「なにかリクエストありますか? 自分の星座の話がいいとか」
マイクを通して彼に聞くと、「いや」とそっけない返事が返ってきた。
「なんでもいい。真央に任せる」
「わかりました」
少し考えて、今日の星空を天井いっぱいに映す。
投影機から放たれた六千五百個光の粒がドーム状の天井に当たり、まるで本物の夜空のように星がきらめく。
「プラネタリウムは、新幹線よりも飛行機よりも早く旅をできる乗り物です。地球上のすべての場所から見上げる星空を映すことができ、時間も自由に操ることができるタイムマシンでもあります」
そう言いながら、操作盤の中の緯度変化のスイッチを動かすと、ドームの真ん中に設置されたプラネタリウムの投影機がゆっくりと回転する。