ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「今日は私たちがいつも見上げている北天ではなく、南半球からしか見ることができない南天の星をご案内したいと思います」
通常のプラネタリウムでは、北半球から見られる星座を中心に解説するから、投影機で南天の星座を映すのは珍しい。
空を見上げると、投影機の動きに合わせ空全体に映る星がゆっくりと回っていた。
目に映るすべての星が一斉に動くと、回っているのが空なのか自分なのかわからなくなる。
「ドーム内中央にある大きな鉄のカプセルを斜めに設置したような形の投影機ですが、上の球体が北半球の星座、下の球体が南半球の星座を映し出し、上下に突き出した円筒形の部分から太陽、月、水星や金星などの惑星が投影されます。南天の星座を映すために投影機を動かしていくと、ドーム全体に映し出される星が同時に移動して、ふわふわ浮いているような気分になりませんか?」
マイク越しに清瀬さんに話しかけると、前の座席に座る彼がうなずいた。
「確かに。投影されている星じゃなく自分のほうが移動している気分になる」
「まるで宇宙船に乗って星の中を旅しているみたいですよね」
「改めて見ると投影機は、星を映すためだけにあるとは思えないくらい仰々しいかたちをしてるな」
「昔の人が考えた宇宙船の模型だよ、って言われたら、信じてしまいそうな不思議な形ですよね」
黒くごつごつした球体にびっしりとついた丸い小窓。
星空を背景に浮かび上がる投影機のシルエットは、レトロフューチャーとかスチームパンクとか、そんな少し不思議な世界観を感じさせる。