ホテル御曹司が甘くてイジワルです


「最新型の投影機は小型で丸い形状のものが主流なので、この形の投影機はこの先どんどん減っていくと思います」

だから、できる限りこの投影機を残したい。そのためにもこの『坂の上天球館』を守りたい。
そう思いながらつぶやくと、清瀬さんがコンソールに立つ私をちらりと見た。

同時に投影機が動きを止め、頭上の星たちも移動を終える。

「南天の星座の下に到着しました」

そう言って星座解説をしようとすると、「真央」と清瀬さんが私を呼んだ。

なんだろうと首をかしげる私に、振り返った清瀬さんが隣に座れというように目配せをする。

確かにふたりきりの星座解説なら、わざわざコンソールでマイクを使わなくても、隣で話す方が早いかも。
そう思いながら頷いた。

暗いドーム内を足元に注意しながら移動して、清瀬さんのいるところまでやってくる。
折りたたまれた座席を開き腰を下ろすと、体が後ろに倒れぎしりと軋む音がした。

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