ホテル御曹司が甘くてイジワルです
なんだろう、と目を見開くと、隣に座る清瀬さんが体を起こし、私の座席の背もたれに手をついていた。
リクライニングが倒れ、まるで押し倒されているような態勢になる。
見開いた視界に、清瀬さんが私に覆いかぶさっている。
目の前にはネクタイをしめた色っぽい首元。
おずおずと視線をあげれば、星明りの中、真剣な表情でこちらをみつめる清瀬さん。
も、もしかしてキスをされる……!?
「ま、待ってください、清瀬さん……っ」
近づいた距離に動揺して息をのむと、頭上から冷静な声が降ってきた。
「座席の質が悪すぎる」
「……は?」
ぽかんとしていると、清瀬さんが私の座席の背もたれについた腕に体重をのせる。
すると背中のほうからギシギシと軋む音が聞こえてきた。