ホテル御曹司が甘くてイジワルです


「客が背中に体重をかけるたびにこんなにギシギシなったんじゃ、せっかく綺麗な星空を見ていてもいちいち気が散る」
「はぁ……」
「長年使っているせいだろうが、クッションが固くなって座り心地が悪いし、独特の匂いが染みついていてとても快適とは言えない」


……あぁ、清瀬さんは私を押倒してキスをしようとしたわけじゃなく、ただ座席の問題点を教えてくれただけなんですね。

ほっとして気が抜けた後、じわじわと耳が熱くなっていく。

一瞬でも勘違いしてしまった自分が恥ずかしくて耳を隠してうつむくと、長い指にあごをすくいあげられ、清瀬さんのほうを向かされた。

「そんなに動揺して、どうかしたか?」
「い、いえ。なんでもないです!」

あわててかぶりを振った私に、彼は意地悪に口端をわずかに上げる。

「俺にキスされるかもって、期待でもした?」
「ち……っ!」

ちがいます、と否定しようとしたけれど、言うよりも先にぶわっと頬が熱くなる。
その反応に清瀬さんがさらに意地悪な笑みを浮かべた。

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