ホテル御曹司が甘くてイジワルです


「そんな涙目で見つめられたら、本気でキスをしたくなる。もしかして、俺を誘ってるのか?」
「さ、誘ってるわけないですっ!!」

叫ぶように言って、勢いよく立ち上がる。

ずんずんとコンソールに向かい、ドーム内の照明をつけた。
一気に辺りが明るくなり、それまで頭上で輝いていた星が消える。

「問題点を教えていただきありがとうございましたっ!!」

清瀬さんを睨みながらそう言うと、彼はくすくすと笑って立ち上がった。

動揺しまくる私とは対照的に、余裕たっぷりの態度が憎らしい。


バターン、と乱暴に出口の扉を開け、事務所にいる館長に声をかける。

「館長、消臭剤ありましたっけ!?」
「あるけど、一体どうしたの夏目さん」

私の剣幕にきょとんとしながらスプレーの消臭剤を差し出す館長。
ありがとうございますと受け取って大股でドームに戻る私を見て、館長は首をかしげた。

むきになって座席に消臭剤をふきかける私を見て、清瀬さんは楽しげに笑っていた。


< 77 / 278 >

この作品をシェア

pagetop