ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「そんな涙目で見つめられたら、本気でキスをしたくなる。もしかして、俺を誘ってるのか?」
「さ、誘ってるわけないですっ!!」
叫ぶように言って、勢いよく立ち上がる。
ずんずんとコンソールに向かい、ドーム内の照明をつけた。
一気に辺りが明るくなり、それまで頭上で輝いていた星が消える。
「問題点を教えていただきありがとうございましたっ!!」
清瀬さんを睨みながらそう言うと、彼はくすくすと笑って立ち上がった。
動揺しまくる私とは対照的に、余裕たっぷりの態度が憎らしい。
バターン、と乱暴に出口の扉を開け、事務所にいる館長に声をかける。
「館長、消臭剤ありましたっけ!?」
「あるけど、一体どうしたの夏目さん」
私の剣幕にきょとんとしながらスプレーの消臭剤を差し出す館長。
ありがとうございますと受け取って大股でドームに戻る私を見て、館長は首をかしげた。
むきになって座席に消臭剤をふきかける私を見て、清瀬さんは楽しげに笑っていた。