冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「楽しめるといいわね」

「うん。働いてるうちに、また別の将来も見えてくると思う。そうしたら早織にも相談するよ」

「ひとりで決めてもいいのに」


私はべつに、なんでも話せと迫るタイプじゃない。了も知っているはずなのに、と首をひねると、了が笑った。


「決めるのは自分でするけど、早織ともシェアしたいよ。家族ができても、俺がこんなふうにやりたいことをできるのは、早織のおかげだもん」

「えっ?」

「早織が、俺と同じ目線で、楽しみだね、がんばってねって言ってくれるの、俺ほんと好きなんだよ。幸せだなあって思う」


あきれるほどのまっすぐさだ。だけど今は、あきれより胸の熱さが勝る。私もそんなふうに、了になにかあげられていたのなら、うれしい。


「今日、思ったの。妻は家にいるべきだとか、昔からある風潮は、それはそれで根拠があったのかもって」

「ん?」


社会とつながりのある以上はどうしても、そこでの立場を気にする。白い眼で見られることを避けたかったら、一番楽なのは、子どもの健康や安全を無視することだ。今日だったら『この子は私がいなくても大丈夫』と思いさえすればいい。

子供は声をあげない。社会での義務を果たせば、だれからも非難されずに済む。


「そんなふうに優先順位を間違わないように、母親は社会から切り離すべきだって、考えられてたんじゃないかなって」

「そんなことないよ。今の時代に専業主婦の奥さんを欲しがる目的は、自分の身の回りの世話をしてほしいってのが大多数だろうし、切り離したデメリットはまったく検証されてない」


了って冷静だなあ。

ここまで気持ちよく否定されると、たしかにそうかもと思えてくる。罪悪感というのは目を曇らせるみたいだ。


「そっか……」

「ま、人それぞれだろうけどね。ようするに、みんな好きにすればいいんだよ。で、人が好きにしてても気にしない。ある程度の迷惑はお互いさま。それだけ」

「そんなおおらかな世界、想像がつかない」

「ちょっとずつでも変わればいいよね。恵が同じつらさを味わったら嫌だ」


本当にそうだ。むしろ変えていくのが大人の役目か。

ふと、いずれまた真紀と働く未来が見えた気がした。

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