冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
* * *


週末、私は元気になった恵を了に任せて出かけた。髪を切ることにしたのだ。

長くお世話になっている美容師さんにお願いし、耳の下までのボブにしてもらった。似合う似合わないは他人の評価に任せるとして、自分としては気に入った。そしてすばらしく軽い。


「ただいま」

「お帰り、早かっ……」


家に帰ると、ちょうど了が玄関を入ってすぐの廊下にいて、出くわした。私を見て言葉をなくしている。髪を切ることを言っていなかったのだ。


「どう?」

「あの……すごくいいよ、いい。すごく」


それが、元とはいえ芸能事務所社長のコメントだろうか。私が唖然としていることに気づいたらしく、了が慌てた。


「似合ってる。顔が明るく見えるし……その」


それからなぜか、ふわっと耳を染める。


「かわいいよ。俺は好き」

「ありがと。恵は?」


いつもなら転がり出てくる小さな塊がないのを不思議に思いつつ、パンプスを脱ぐ。了はなぜか、まだ赤い顔で目を泳がせていた。


「あの、真琴さんにつれ出してもらったんだ。真琴さん、すごいね、このあたりの公園とか休ませられる施設とか、もうめちゃくちゃ詳しいの」

「根がまじめで優しいのよ。ほかのお母さんと交流まであるのよ。まこちゃんが恵の母親だと思われてるかも。ところで仕事、忙しいの?」


言ってくれたら髪を切るくらいで出かけなかったのに。了は「ううん」と首を振った。途方に暮れたような顔で佇んでいる。


「早織とふたりで過ごそうと思ったんだ」


コートを脱ぎかけ、私は動きを止めた。視線を受けて、了が早口になる。


「べつに、変なこと考えてたわけじゃないんだよ、たまには数時間くらい、そういう時間があってもいいかなって思っただけだったんだけど……」

「だけど……?」


了は困り顔で、答えない。私は戸惑った。
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