Monkey-puzzle
「私…本当に申し訳ない事をしたと思ってます。
だけど、どうしても腑に落ちなくて。亨…ごめんなさい、巻き込んでしまって。」
腑に落ちない?何の事について?
いや、その前に、今、田所さんが『亨』と呼んだ…よね。
本日二度目。またもや見えない事情に少し首を傾げた。
「や、優香、君は悪くないよ。悪いのは僕だ。全ては僕の責任だ。」
亨も田所さんを下の名前で呼んでいる。
元々の知り合いで…しかもそれなりに親しい仲だったと言う事?
それを何故今ここで?
全く分からないことだらけの状況に、思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「その…失礼ですが、田所さんは真田とはお知り合いで…。」
「亨は私の元恋人です。」
こ、恋人?!
“元”ということは、今は違う…私と亨の関係が続いていた間も…もしかして田所さんは彼女だったとか…
うそ…どうしよう。全く気が付かなかった。
謝らなければならないのは私なのでは…
けれど、そこに抱いた違和感。
「ええと…よく事情が飲み込めませんが、二人が元恋人でそれを隠していたから私に対して後ろめたくて、黙っていられなくなった田所さんが謝りに来たと言うことですか?」
そんなプライベートな話だったら、昨日一緒にご飯を食べた時とか、他にもチャンスはあったはず。
それに、先ほどから田所さんと全然目線が合わず、寧ろ、合わせようとすると逸らされる…
相変わらず瞳を潤ませて、亨と渋谷を見ている田所さんに私に対する謝罪の念があるとはどうしても思えない。
指を微妙に握り直した事で、私の違和感が渋谷に伝わったのかもしれない。
いや、偶然と言う方が自然だけど、優しく握り返された指に何となくこの時はそう考えた。ずっと無言を貫いていた渋谷がこのタイミングで口を開いたから。
「…二人とも、回りくどいですね。違う話題をのっけて本当に話さなきゃいけない部分をぼかすと言う狙いなら失敗だったかもよ。
二人の関係を暴露した所で、この人、あまり混乱していないみたいじゃん。」
絡められた指とは裏腹に、メガネの隙間から見えた渋谷の二人への眼差しは明らかに挑発的。渋谷は何か事情を知っているのかもと改めて渋谷に目線を移した。
「ね、ねえ渋谷、『本当の話』って…?」
「あ~…ごめんね、真理さん。俺、偶然気が付いちゃってさ。あのデタラメなメールを送って課内に流した犯人共。」
“犯人共”って…
田所さんと視線がぶつかった瞬間にまた逸らされる。
もしかして…田所さんが送った?
「い、いつ気が付いたの?渋谷は。」
「昨日、田所さんと会って話した時。
だって、田所さんが真理さんのスケジュール知っているなんておかしいじゃん。
『休みなのにご苦労様です』って言ったでしょ?出会い頭の会話で。
しかも智ちゃんの事だって『二人で会うならともかく』ってさ…事情を知らなきゃなかなか出てこないよ、あの言葉は。」
…言われてみれば。
いや、でもそんなに言葉の裏に注意しないよ普通。
渋谷って凄いな…。
尊敬の念を抱いて気が付いた。
いや、でも待って?と、言う事は渋谷は全部わかっていて、田所さんを送って行った。
さっきの言い争いからして、事実を確認する為だった…とか?
それなのに私勘違いして…モヤモヤしていた…
何それ。私…ものすごくダメな人間じゃない。
信じきれなかった自分に反省して『ごめんね』と気持ちを込めて優しく力を入れた指。それにまた反応して握り返してくれる。
ありがとう渋谷。
色々考えてくれていたんだね。それは本当に嬉しい。そんな風に私の事を考えてくれて動いてくれて。
…だけど。
だけど、どうしても腑に落ちなくて。亨…ごめんなさい、巻き込んでしまって。」
腑に落ちない?何の事について?
いや、その前に、今、田所さんが『亨』と呼んだ…よね。
本日二度目。またもや見えない事情に少し首を傾げた。
「や、優香、君は悪くないよ。悪いのは僕だ。全ては僕の責任だ。」
亨も田所さんを下の名前で呼んでいる。
元々の知り合いで…しかもそれなりに親しい仲だったと言う事?
それを何故今ここで?
全く分からないことだらけの状況に、思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「その…失礼ですが、田所さんは真田とはお知り合いで…。」
「亨は私の元恋人です。」
こ、恋人?!
“元”ということは、今は違う…私と亨の関係が続いていた間も…もしかして田所さんは彼女だったとか…
うそ…どうしよう。全く気が付かなかった。
謝らなければならないのは私なのでは…
けれど、そこに抱いた違和感。
「ええと…よく事情が飲み込めませんが、二人が元恋人でそれを隠していたから私に対して後ろめたくて、黙っていられなくなった田所さんが謝りに来たと言うことですか?」
そんなプライベートな話だったら、昨日一緒にご飯を食べた時とか、他にもチャンスはあったはず。
それに、先ほどから田所さんと全然目線が合わず、寧ろ、合わせようとすると逸らされる…
相変わらず瞳を潤ませて、亨と渋谷を見ている田所さんに私に対する謝罪の念があるとはどうしても思えない。
指を微妙に握り直した事で、私の違和感が渋谷に伝わったのかもしれない。
いや、偶然と言う方が自然だけど、優しく握り返された指に何となくこの時はそう考えた。ずっと無言を貫いていた渋谷がこのタイミングで口を開いたから。
「…二人とも、回りくどいですね。違う話題をのっけて本当に話さなきゃいけない部分をぼかすと言う狙いなら失敗だったかもよ。
二人の関係を暴露した所で、この人、あまり混乱していないみたいじゃん。」
絡められた指とは裏腹に、メガネの隙間から見えた渋谷の二人への眼差しは明らかに挑発的。渋谷は何か事情を知っているのかもと改めて渋谷に目線を移した。
「ね、ねえ渋谷、『本当の話』って…?」
「あ~…ごめんね、真理さん。俺、偶然気が付いちゃってさ。あのデタラメなメールを送って課内に流した犯人共。」
“犯人共”って…
田所さんと視線がぶつかった瞬間にまた逸らされる。
もしかして…田所さんが送った?
「い、いつ気が付いたの?渋谷は。」
「昨日、田所さんと会って話した時。
だって、田所さんが真理さんのスケジュール知っているなんておかしいじゃん。
『休みなのにご苦労様です』って言ったでしょ?出会い頭の会話で。
しかも智ちゃんの事だって『二人で会うならともかく』ってさ…事情を知らなきゃなかなか出てこないよ、あの言葉は。」
…言われてみれば。
いや、でもそんなに言葉の裏に注意しないよ普通。
渋谷って凄いな…。
尊敬の念を抱いて気が付いた。
いや、でも待って?と、言う事は渋谷は全部わかっていて、田所さんを送って行った。
さっきの言い争いからして、事実を確認する為だった…とか?
それなのに私勘違いして…モヤモヤしていた…
何それ。私…ものすごくダメな人間じゃない。
信じきれなかった自分に反省して『ごめんね』と気持ちを込めて優しく力を入れた指。それにまた反応して握り返してくれる。
ありがとう渋谷。
色々考えてくれていたんだね。それは本当に嬉しい。そんな風に私の事を考えてくれて動いてくれて。
…だけど。