その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ
数日後。営業課内で、武宮課長の歓迎会を行なうことになった。
場所は駅近くの有名チェーン店の居酒屋。幹事は相田君が頑張ってくれている。
「それでは、武宮課長ようこそという意味を込めて〜、乾っ、杯〜!」
慣れない音頭にやや噛みながらも、相田君の元気な掛け声に合わせて私達のビールジョッキがガチンとぶつかり合う。
営業課の社員は全員で九人。
部屋は和風の個室で、部屋の真ん中に長テーブルがある。
主役の課長には真ん中に座ってもらい、他の社員の座席はくじ引きで決めた。
私は武宮課長の隣の席の座布団に腰をおろすことになった。
「課長って酒には強い方ですか?」
課長の正面に座る河野さんがそう尋ねると、課長は「割と強いかな」と答えながらビールをぐびっと喉に流し込む。
「じゃあ、営業課で酒が弱いのは幹本だけだな!」
急に名前を出されて、河野さんを小さく睨み付ける。
お酒が弱いことをからかわれたからではなく、多人数で過ごすこういう場で名前を出されて皆に注目されるのが苦手だからだ。河野さんだってそのことは知っているはずなのに、という意味を込めての視線だったのだけれど、彼は気にする様子もない。
「へぇ、幹本さんってお酒弱いんだ」
武宮課長がジョッキを片手に私に話を振る。
皆の前で〝由梨ちゃん〟と呼ばれなくて少しホッとするも、苦手なタイプである彼に早速弱味を握られたような気分になってしまい、言葉に詰まる。
場所は駅近くの有名チェーン店の居酒屋。幹事は相田君が頑張ってくれている。
「それでは、武宮課長ようこそという意味を込めて〜、乾っ、杯〜!」
慣れない音頭にやや噛みながらも、相田君の元気な掛け声に合わせて私達のビールジョッキがガチンとぶつかり合う。
営業課の社員は全員で九人。
部屋は和風の個室で、部屋の真ん中に長テーブルがある。
主役の課長には真ん中に座ってもらい、他の社員の座席はくじ引きで決めた。
私は武宮課長の隣の席の座布団に腰をおろすことになった。
「課長って酒には強い方ですか?」
課長の正面に座る河野さんがそう尋ねると、課長は「割と強いかな」と答えながらビールをぐびっと喉に流し込む。
「じゃあ、営業課で酒が弱いのは幹本だけだな!」
急に名前を出されて、河野さんを小さく睨み付ける。
お酒が弱いことをからかわれたからではなく、多人数で過ごすこういう場で名前を出されて皆に注目されるのが苦手だからだ。河野さんだってそのことは知っているはずなのに、という意味を込めての視線だったのだけれど、彼は気にする様子もない。
「へぇ、幹本さんってお酒弱いんだ」
武宮課長がジョッキを片手に私に話を振る。
皆の前で〝由梨ちゃん〟と呼ばれなくて少しホッとするも、苦手なタイプである彼に早速弱味を握られたような気分になってしまい、言葉に詰まる。