惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
信じられない言葉に目が点になる。そんな展開に憧れていたのは確か。いつか陽介さんと結婚できたらと。でもそれは、私の妄想が作り上げた勝手な夢だと思ってきた。
陽介さんは戸惑う私をそっと抱き締めた。
「香奈? 聞いてる?」
耳元で囁かれ、何歩も遅れて鼓動が加速を始める。
「は、はい……」
「香奈のお兄さんに初めて会ったときに俺が言ったこと、覚えてる?」
兄に私との将来を聞かれたときの陽介さんの答えだ。もちろん忘れるはずもない。
『香奈さんのことは一時のことだとは考えておりません。将来のことも真剣に考えております』
プロポーズとも思える発言に、私がドキドキさせられたことも。
コクンと頷くと、陽介さんは微笑んだ。
「あのときも今も、気持ちは一緒だ」
あの言葉まで本心から言ってくれたものだったなんて……。
嬉しさを通り越して、幸せな気持ちが尽きることなく胸に溢れてくる。
「返事は?」
「はい、よろしくお願いします」
顔いっぱいに笑顔がこぼれる。あまりにも嬉しくて抱きつくと、陽介さんは私を強く引き寄せて、とろけるほどに甘いキスをくれた。
END


