惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

まだ返事もしていないのに。

これまで全然知らなかったけれど、陽介さんは結構強引だ。
戸惑う私の背中を押し、陽介さんはミーティングルームから私を追い立てた。

ひと足先に一階のオフィスゲートを抜け、ビルの外へ出る。西の空をほんのりと染めるオレンジ色は、徐々に群青色に変わりつつある。
数分後、突然右手がふわりと軽くなったかと思えば、陽介さんが現れた。


「持つよ」


彼が私のバッグを持ってくれたのだ。


「ですがっ」
「いいから。左手じゃ持てないだろう?」


だから右手で持っていたんだけど……?
そう思っているそばから、空いた右手は陽介さんの手に握られた。
ハッとして横顔を見上げると、「彼氏だから問題ないだろ?」と涼しい顔をして言う。


「今日は、香奈とこうして帰りたくて車じゃなく電車で来たんだ」


普段の陽介さんは運転手付きのハイヤーで通勤している。

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