惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
電車を乗り継いで約三十分、私のマンションに到着した。
そういえば……。ここへ来たのはいいとして、夕食はどうするつもりなんだろう。どこかで食べてくればよかったかもしれない。この手じゃ料理はできないし。
そんな後悔をしながら、とりあえず部屋に上がってもらおうと鍵を開ける。
「左手が使えないから、掃除はあまりできていないんです……」
ていのいい理由で、あまり片付いていないことをアピールしつつ玄関の鍵を掛け直した。
「……ほんとにひどい有様だね」
私より先に部屋に上がった陽介さんが、ポツリと口にする。
そこまで言われるほど散らかっていたかな……。
ハラハラしながら振り返り、私は言葉を失った。
一DKの部屋は、玄関からほぼ全体が見渡せるくらいの広さ。私の視界に入ったそこは、今朝とまったく違う姿をさらしていたのだ。キッチンの引き出しはすべて開けられ、カトラリーや皿が床に散らばり、クローゼットから引っ張り出した洋服類はベッドやソファーに散乱。とにかく引き出しという引き出しから物が出され、陽介さんの言うとおりひどい有様だった。