惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
どうしよう……。どうしたらいいの……?
なにもできずに放心状態。
腑抜けになった私の肩を陽介さんがトンと叩く。
「ほら、香奈、しっかりして」
そう声を掛けてもらうことで、やっと意識が舞い戻った。
部屋をくまなく調べてみたところ、不思議なことに通帳や現金のたぐいはすべて残っていた。なくなったのは下着だけ。それも上下がセットになったお気に入りのものが三つ。
陽介さんにサポートしてもらいながら駆けつけた警察官に事情を話してみると、最近この界隈で頻発している空き巣と同一犯の可能性が高いということだった。どの事件も窓から侵入され、下着が盗まれているらしい。
「くれぐれも戸締り忘れのないようにしてくださいね」
そう言って警察官ふたりが立ち去るのと入れ違いで、血相を変えた兄が玄関に飛び込んできた。
「香奈! 無事か!? いったいなにがあったんだ!? 今、マンションの下で赤色灯をつけたパトカーが停車していたから、まさかと思ってここに急いで来てみれば、警察官が香奈の部屋から出て行くじゃないか。なにがあったんだ。お兄ちゃんに話してごらん。ハッ……まさか、そこの工藤陽介がなにか……!」