惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
みるみるうちに眉が吊り上がり、それはまさに鬼の形相だった。整った顔立ちだからこそ、余計に迫力がある。
「お兄ちゃん、落ち着いて!」
陽介さんに掴みかかる勢いで靴を脱ぎ、部屋に上がった兄の前に慌てて立ちはだかる。すると陽介さんは、大丈夫だとでも言いたそうに私の背中を軽くトントンとした。
「それじゃ、いったいどうしたんだ」
「空き巣に入られたの」
「空き巣!? どこから」
「ベランダの窓から」
そう言いながら窓を指差す。現場検証のときに警察官が開け閉めしたまま、まだ施錠していない。
「鍵を掛けてなかったのか?」
「忘れたみたいで……」
「どうして忘れたんだよ」
「どうしてって言われても……」
窓ガラスを割られた形跡がないところを見ると、締めていなかったのだろう。三階だからまさかという思いが常日頃からあったことは否定できない。こんな高い階までは上ってこられないだろうと。