惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「香奈、どうするんだ? お兄ちゃんの部屋に来るだろう?」
「香奈、うちにおいで」
「えっと……」


懇願する兄の瞳と、どこか甘く誘うような瞳の陽介さん。ふたりに見つめられ、どうしたらいいのか混乱した。

陽介さんの言うように、この部屋にひとりでいるのはできれば避けたい。一度空き巣に狙われた部屋は、再び被害に遭う確率が高いという話を聞いたこともある。
かといって、彼のマンションに転がり込むだなんて……。

でも、もしもここで兄の部屋を選んだりしたら、陽介さんに彼氏になってもらったことがなんの意味もなくなる。

難しい二者択一の問題をいきなり出されて、思考回路がぐちゃぐちゃに絡み合う。
ふたりの瞳は、早く答えを出せと急かしていた。


「香奈、なにも悩むことはないだろう? お兄ちゃんの部屋にいれば安心だから」


兄にそっと取られた手をやんわりと外した。


「……香奈?」


ここで兄の部屋を選択したら、兄と私は永遠にこのまま。溺愛の包囲網はさらに強固なものになる。だとしたら……。

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