惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「お兄ちゃん、ごめんね。私、陽介さんの部屋に行く」


兄に真っすぐ向き合い、はっきりと告げる。


「えっ、どうしてなんだ」
「だって、陽介さんは私の彼氏だから。ごめんね、お兄ちゃん。心配しなくても大丈夫」


努めて明るく言うと、兄はがっくりと肩を落とし、「そうか、わかったよ……」と消え入りそうな声で言ったかと思えば、トボトボと自分の部屋へと戻っていった。


「そうと決まれば、香奈、早速準備しよう。この部屋を少し片づけてからのほうがいいだろうね」


陽介さんが突然張り切り出した。スーツのジャケットを脱いでソファに置き、ワイシャツの袖口をくるくるとまくり上げる。あまり陽介さんに見られたくはない洋服や下着の類は私が、陽介さんはキッチンの片づけをやってくれることになった。

それにしても、空き巣犯もとんでもないことをしてくれたものだ。ただでさえ怪我をして不自由な状態なのに、こんなに散らかしていくなんて。下着が目的だったら、キッチンはせめて手をつけないでくれればよかったのに。

理不尽なことに小さな怒りをぶつけながら、ひととおり片づけ終わった私たちは、近くの大通りでタクシーを捕まえて乗り込んだ。

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