惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
しばらく過ごすことになる陽介さんの部屋に持っていく私物が、結構な量になったためだった。キャリーバッグひとつと大きな旅行カバンがひとつ。ただでさえ空き巣事件で疲れたところ、電車での移動は大変だと陽介さんが気づかってくれたのだ。
「本当にいいんですか?」
この期に及んで私が確認したのは、到着した陽介さんの部屋のドアの前。彼の住むマンションは静かな住宅街に建つ低層マンションだった。
低い代わりに横に広い建物は、さながら近代美術館のよう。エントランスから入ると、すぐ右手には手入れの行き届いた西洋風の庭園が、絶妙な角度のライトを浴び美しい姿を見せていた。
大きな旅行カバンを肩に掛け、キャリーバッグを引いてくれた陽介さんは、「ここまで来て聞く?」と訝った。
「……ですよね、でも一応……」
「付き合ってるなら当然だ」
「それは……」
あくまでも“ふりの一環”ですよね?と言いづらいような真剣な眼差しとぶつかり、言葉を飲み込む。
「入って」
ドアを開けて、陽介さんは私を中へと誘なった。