拾い恋(もの)は、偶然か?
「ちょ、部長!」
「少しだけ。」
部長の大きな体に包まれて、甘い香りが鼻を刺激する。ああ今、私ってきっと世界一幸せかも、なんて、恥ずかしげもなくそう思うのはきっと、部長が魔法をかけてるからかも。
ドンドン思考が少女の世界へ。だけどそんなことも気にならないくらい、幸せだ。
「あー、癒される。」
「ふふっ、」
部長が嬉しそうにそう言うから、思わず笑みが零れた。私だって、癒されてる。抱きしめられるだけで幸せ感じるなんて、そんな恋したことないから。
「それで、どうした?」
少しだけ体を離した部長が首を傾げる。その可愛らしい動作を見るだけでさっきまでブチ切れていた自分が拡散していきますー。
でもここは、きちんとしなければ。口端から今にも零れ落ちそうだった涎を吸って表情筋に気合を入れて部長を睨みつけた。
「ど、どうした?」
なんとか伝わったのか、部長が目を見開いていて、その怯えたような表情に、一歩前に出る勇気がなくなりそうになる。
だけどこれは、私と部長の未来のため!
「部長、私。」
「音。」
言いたいことは言う。
「寂しいです。」
「……え?」
部長を好きだけど私たちはまだ、きちんと付き合っているとは言えないと思う。私は部長と付き合っていて、思ったの。
【寂しい】って。