拾い恋(もの)は、偶然か?
「私の言うことは、色々叶えてくれるんですよね?」
「まぁ。」
会議室の一室。素敵な彼氏を独り占め。私は終わったけど部長は仕事中に何やってんだと思うけど。
「それじゃまずは、もうちょっと強く抱きしめていただけると大変ありがたいです。」
「ふ。それは言われなくてもする。」
部長を見ていたらものすごく、自分が馬鹿みたいに見えるから。もう色々考えるのはやめることにした。
強く抱きしめてくる部長の腕はたくましくて、香る甘さは密着することによって、私にも乗り移る。こんなことができるのは、私が部長の彼女だからで、こんなにも甘い笑顔を向けられるのは、部長が私を好きでいてくれるから。
「部長、好きです。」
「っっ、音。」
自然と出てくる言葉は、誰もいない会議室に小さく響き、拡散していく。
「ほんとに。大好き。」
次いだ言葉に、部長の腕に力が込められ苦しさに笑みが漏れた。だけど、部長のその顔に浮かぶ悲しみに、浮かれる私が気付くはずもなく。
馬鹿なことにただただ、部長の温もりに、酔いしれていた。