拾い恋(もの)は、偶然か?
その声は、どう考えても私の後ろから聞こえてくる。ふわふわしてる頭をフルに動かしてみても、大して働きはしないらしく、ボーッとしたまま、真上を見上げた。
「や。」
相変わらずの下手くそな笑顔は、この人の“営業用“なのだと、最近気付いた。
「部長?」
「こんばんは。」
「はぁ、こんばんは。」
見上げた部長の隣を見ると、顰めっ面の男性が立っていた。
司馬部長よりは年上だけど、この人も優秀で有名。
我が社の花形、営業部の部長様。年が10は離れてるのに、司馬部長と仲が良いと有名だった。
「奇遇だね、俺達もここに飲みに来たばかりなんだ。」
「そうなんですか。」
「ああ。」
司馬部長の発言にものすごい違和感。この居酒屋は安いで有名で、ビールが1杯280円という破格の安い居酒屋だ。
明らかにスーツの質まで違う部長様2人が軽々来店するところじゃ決してない。
しかもこの2人、というだけでさらに有り得なかった。
「一緒に飲んでいいかな?」
「は?」
「是非っ!」
低い声で不愉快そうに言ったのは営業部部長、松田総士(まつだそうし)部長。
そして食い気味でOKして私にこっそりウインクしてみせたのは、鳴海さんだ。