拾い恋(もの)は、偶然か?
「音は俺が好きなのか。」
「……さっきも言いましたが。」
どうやら、私がさっき好きだと言ったのをものすごくうれしがっているらしい。ほんとに不思議な人だ。私なんかに好かれて、こんなにも喜んでくれるなんて。
「部長って、私のことすごく好きですよね。」
「ああ、好きだよ。」
「……。」
間髪入れず、いや、若干食い気味にそう言われてしまうと、頬が熱くなる。なんだか思春期に戻ってきたような、余裕のない恋。
部長を前にすると、いつも熱に浮かされたような高揚感に苛まれる。
「っっ、」
途端に、部長の胸元が目の前に出現した。抱きしめられていると気付いたのはすぐ。思わず頬が緩んで、私も強く抱きしめ返した。
「好きだよ、音。」
「私も、好きです。」
昨夜の余韻が残る、気だるい朝。大好きな人と抱きしめ合って、気持ちを吐露し合う。
幸せだと思った。こんな朝を迎えるのに、憧れていた。
---だけど。
「幸せそうだねぇ、兄さん。」
突然現れたその声の主が、私と部長の幸せを脅かすことになる。
「衛(まもる)。」
「おはよー。」
部長の腕の中、彼を振り返れば、私を抱く腕に痛いほど強い力が入った。
見上げた部長の険しい表情と、こちらを見るニヤついた目がまさに両極端で、妙に嫌な予感を覚えた。